中国訪問に寄せて Y.O

 

 初めての中国訪問が太極拳学習のための旅になるとは思いもよらないことでした。

 

 飛行機で、空から眺めた中原はどこまでも広く、穀倉地帯の中に点々と家屋の集まりがあり、この集まりの中に住む人々、家族一族を守るために様々な拳法が編み出されてきたのだと気付きました。

 

 太極拳と名が付いたのは、400年ほど前だそうですが、400年なんて長い中国の歴史からみたらほんのつい最近のことでしょう。その前には、戦に勝つための技を磨いてきた長い時間があったはずです。

 

 陳小旺老師は、その長い歴史を背負って生きてらっしゃるに違いない。

 

 そんなことを思いながら、大陸に降り立ちました。

 

 老師の姿を拝見するのは昨年来日された時以来一年数箇月ぶりですが、技がよりそぎ落とされた感じがしました。皆一人一人丁寧に教えて下さるのですが、老師が手を触れると、皆が素晴らしく美しい姿になるのには驚き、感動しました。

 

 老師の在り様は、いわば世阿弥のいう「得たるもの」という風情で、とても真似出来ることではありません。仙人のようです。

 

 憧れであって、目標にすらなりません。

 

 だれかが、草書のようだ、と言いました。凡人は楷書から地道に稽古に励むだけ、と思った次第です。